丸田氏「控訴」決断〜丸田祥三氏『棄景』剽窃被害12

 
  丸田祥三氏が盗作で小林伸一郎氏を訴えた裁判、さる12/21に判決が出ました。
 原告側の訴えは棄却されました。

 曰く、アイデア著作権はなく法的には守られない、と。

  この論理で行くと、写真家はモデルとなる被写体自体を自分で工作もしくは変造でも加えない限り、その作品が著作権で守られることはないということになります。
 つまり通常写真家の仕事だと思われているものは、全部無権利だった、と。

 判決直後の肉声を、私と歌人枡野浩一氏が聴き手となり、動画で中継しました。
 http://www.ustream.tv/channel/masunoshoten
 ここで丸田氏は、自分が訴えてしまったせいで、かえって写真界に大変な影響を与える判例を作ってしまったことを皆様にお詫びしたい、と言っていました。

 あれから数日。
 いったいどういう意味を持つ判決なのか、日一日たつごとに、重く感じられます。

  実は写真界ばかりか、広く表現の世界全体に影響する問題ではないか、と。

 どんなに盗用の疑惑が口にされても、明らかに依拠したことさえ言わなければ、法的にはなんの問題もないことが証明されてしまった。
 これまではそれぞれの業界の自浄努力や、倫理観によって、双方の言い分を聞いてきたケースも多いこの種の問題も、今後は「パクッたもん勝ち」になる可能性が強まったということです。

 今回の案件は、まさしく小林氏側の「開き直り」が圧倒的勝利を収めた、ということに他ならないと思います。
 裁判所が事前に和解勧告を出したのは、上記のような影響を判決がもたらすことを想定してのものでしょう。
 しかし小林氏はこれを蹴り、自分一人が助かるために、表現の世界に多大な影響を与えてしまったと言わざるを得ません。

 丸田氏は「自分が訴えてしまったために判例を作ってしまった」と詫びていましたが、彼ははじめから話し合いを求めていたのです。それを蹴り続けてきたのが小林伸一郎であることは、忘れてはならないと思います。

 悩みに悩んだ末、丸田氏は昨日、控訴を決断しました。
 
   私は友人として、これ以上彼が訴訟を続けることの精神的重圧を考えると、安易に背中は押せないと思ってきました。
  しかし彼の決断を聞いて、これはなにかを表現する人間の自己同一性として、たとえばライターである私自身の問題でもあると認識を新たにしました。
 これからも「本当にこれでいいのか?」という問いを発し続けたいと思います。

 皆さんもこの問題に関心を持ったら、ぜひ今後も注視していただければ幸いです。