ジオラマ昭和館

  中央公論の取材で、江戸東京たてもの園と、青梅の昭和レトロ街に行く。
  昭和幻燈館の山本高樹さんによるジオラマが素晴らしい。
  永井荷風の目になって昭和の風景をたどるのだが、赤線玉の井ジオラマを見て、僕は初めて吉原という場所を実感することが出来た気がした。なんていうのかな、ついこのあいだ撤去された横浜黄金町の「ちょんの間」と地続きなものが見えた気がしたのだ。
  花柳界と映画で賑わった往時の青梅を再現したジオラマもすごい。
  いまの青梅はまるで初めから山を背にひなびた商店街があるかのように思ってしまうが、この華やかさ、芸者が行き交う木の橋の下に電車が通る優雅な風景。その中にも子を背負う女の子の哀愁。
  薄暗い空間で、ネオンや提灯に照らされる夜の歓楽風景が幻燈のミニチュアに浮かび上がる。
  いまでも新宿ゴールデン街の入り口付近にある数軒の店は中から怪しい赤い光が漏れているが、あの向うになにがあるのだろうと思いながらも、怖くて行けない。
  「荷風!」という雑誌の表紙で山本さんのジオラマの写真は既に見慣れていたはずだが、実物は圧倒的に違う。 

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