正しきアンダーグラウンド
足立正生監督「幽閉者」
最前線がもっとも停滞した場所になり得るということ。先に走った者だけが知る闇。
自由と不自由。本物とカモフラージュ。物事の裏と表が無限に逆転し続ける。
出発するその時こそが、彼の「原点」だった。
自決し損ねた革命戦士に拷問と薬物投与が繰り返される。
「殺してくれ」と情けなく叫ぶ主人公に、若松プロのかつての作品での若者たちがよみがえる。
ヒーロー、ヒロインが出る映画じゃない。
そして「自分探し」という2000年代のキーワードが飛び出し、批判される。
過去の一点を舞台にしながら、現代に通じる時空を形成。
君は何物でもない。
君は君自身なんだ。
これは禅問答か。
若松孝二「17歳の風景」の啓蒙的な接し方とも違う、若き世代への呼びかけ。
これも正しきアンダーグラウンド精神ではないか。
役者じゃない人が出てくることで、演じることの虚構も浮き彫りになる。
これも正しきアンダーグラウンド。
若松孝二と比べるべくもなく、純度がまったく変わらない足立作品に感嘆。
PANTAさんって、声がいいなあ。最後の朗読には聞き惚れた。