はじめての小説もどき


   いま出ている「小説現代」に小説書いています。
  お金をいただいて小説を発表するのは初めてです。
  編集部の人から「官能小説を書いてほしい」と依頼があったのです。その人は昔から僕に「小説を書いた方がいい」と言っていたのですが、自分の書きたいものを「小説」という括りの中に落とし込まなければならない危急の事態というものを感じなかったので、そのままにしていました。
   
  今回やらせていただこうと思ったのは「官能小説」という括りだったからです。
  エロい妄想なら、中学生ぐらいの頃からしてるし、それをそのまま書く機会というのも滅多にないので、一度やってみたいという好奇心にかられました。400字20枚と枚数もそんなに多くない。

  ただ、エロというものは『情緒論』にも書きましたが基本的にエンドレスなものなのではないかと僕は考えるのです。
  はじまりもなく、終わりもなく、ずっと続いていくような。
  いま入れ替え制の映画館が多い時代に逆行して、ピンク映画館がいまだに三本立てで、多くの観客が時間も確かめずに好きな時に入って出て行くのは、エロというものの本質が、その無時間的弛緩性にあるからだと思うのです。

 だから短編でそれを書くのは無理なんではないかと思い、柳美里さんに話したら「途中から途中までの話を書けばいいんですよ」とアドバイスをいただきました。

 そんなわけで書いてみました。
 中学生の殴り書きみたいなシロモノで、小説とすら呼べるのかどうかわかりません。
 
 校了後、編集部から「顔写真がほしい」と連絡があり、蒼くなりました。
 か、顔が出るの?
 まるで犯罪者のように、「こんなこと書いているのはこんな男か」と思われるのではないか。これはなにかの罰なのでしょうか。

 タイトルは『妄想小説イジメ系』です。