執筆報告


 こちらではご無沙汰しております。
  今週半ばまで、八年前に出した『宮崎駿の<世界>』の、「増補改訂版」文庫の加筆作業を行っていました。やっとその作業がピークを過ぎ、少し時間が出来ました。

  この「増補改訂版」は、かつての新書版では十分に言及しきれなかった『千と千尋の神隠し』と、その後の長編『ハウルの動く城』『崖の上のポニョ』、それ自体が宮崎作品といえるジブリ美術館や、そこで上映されている短編作品に至るまでについて新たに百ページ以上書き下ろしました。
 また、以前書いた部分も、東京都現代美術館で現在開催中のレイアウト展はじめ新しく発掘された資料やインタビュー、この八年間に発表された中野貴雄さん、氷川竜介さん、小黒祐一郎さん、斉藤環さん、阿倍嘉昭さん、岡田斗司夫さん、清水正さん、鎌田東二さん、中沢新一さんほか同時代の鋭い論考で本の流れに刺激を与えてくれた視点を参照させていただきながらの、オール書き直しヴァージョンになります。

 書き直しと加筆で半年以上かかってしまいました。
 新しく、そしてこれまでをその根底からひっくり返し、かつ包括する文庫版の視点を、ぜひ読んでください!
 そして、ぜひみなさんにこちらも読んで頂きたい特典が付きます。まだ秘密ですが「宮崎作品は才気溢れるけれど完成度の点ではちょっと……」と言っている人の視点が一八〇度変わることうけあいのページです。

 ちくま文庫から発売は十月になります。
 また追って情報書かせていただきます。
 ぜひ手に取ってください!


 さて、遅ればせながら掲載情報を……。

 「特撮ニュータイプ」9月号の『プロジェクト昭和特撮』第二回として、昭和ガメラを生みだした脚本家・高橋二三さんのインタビュー批評、後編が掲載されています。今回は怪獣の出番を支える人間たちの愛憎に焦点を当てています。『ガメラ対バルゴン』の怪獣対決よりも凄い大人の人間同士の格闘や、足もとに這うサソリを知りながら仲間を見殺しにする男……といったトラウマシーンを覚えている人はぜひ読んでください。今回は高橋氏の私生活から流れるドラマにまで迫りました。現在一人住まいの氏の部屋に飾られるガメラのフィギュア。その隣にあるものとは……。

 国会議事堂が一転、廃墟に……「東映ヒーローMAX」の連載『仮面の世界』では「キイハンター」のあの音楽と画面がピッタリ合った伝説のオープニングを演出、その後プロデューサーとして、監督として多くの東映ヒーローを支えた堀長文氏に迫る前後編の前編掲載中です。戦隊シリーズで初めて生身の人間だった男が敵の首領となった『趙電子バイオマン』を監督し、共通の悪の組織がおらず「人間の心」を問うた『特救司令ソルブレイン』をプロデュース、七〇年代の情念ある刑事ドラマの精神を九〇年代にまで貫いた人物です。

 「ニャン2倶楽部Z」9月号では北の玄関口・上野オークラ劇場に取材。昭和の香りが残る映画館に魅力に浸ります。ぬくもりのあるお客さんと映画館のゲタ履きの交流が泣かせます。
 
 「映画芸術」最新号では僕が昨年の同誌ベストテンでは一位に挙げた『妄想少女オタク系』を撮った堀禎一監督に、新作『憐』についてインタビュー。これは前作以上の作品だと思いました! 思春期に、学校や友達との「ズレ」を抱えた人ならぜひ見てもらいたい作品です。

 「中央公論」9月号では夏のオススメ文庫特集で、松本零士さんや永江朗さんに並んで、なぜか僕は「官能小説ベスト10」を挙げる羽目に。自分のヰタ・セクスアリスを公開するという羞恥プレイのページになりました。団鬼六先生やレアージュといった定番のみならず、堂本裂、伊達龍彦からサタミシュウまで、ぜひ読者に知ってもらいたい作家たちを紹介させていただきました。