メルマガをはじめるにあたって

メルマガ「映画の友よ」
yakan-hiko.com/risaku.html
の冒頭に記しました、
呼びかけ文、以下に全文掲載します。

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このメルマガをはじめるにあたって


映画の感想を書く時、僕はなるたけ「初期衝動」を重視してきました。

その映画を見て、一番初めに自分が感じたことに正直になる。そして、おためごかしの言葉を出来るだけ書かないようにする。

ただ、最近、歳を重ねたせいでしょうか、映画の感想が、観たその日と、翌日で、ガラッと変わることが多くなってきました。

以前は、初めの感想のまま、長い場合は数年間過ごし、ある事を契機にその映画を見返して、「いまだったらこう思える」という風に変っている自分に気付く……という感じだったのが、最近はもう、翌日すぐ劇的な変化を遂げるようになったのです。

より正確に言えば、映画を観た晩布団に入り、目を瞑った後にランダムにその日の出来事やその日観た映画のことが蘇ってきた時、たとえば登場人物の行動に反発を覚えたり、ストーリーが強引だなと感じられた映画が「いやだからこそ、心にひっかき傷を残しているのではないか」と思えてきたり、ある方向から見れば否定的にしか捉えられない映画が、別の角度から見ればとてもシャープなものに思えたり……。

普通だったら、そういうことはひとつの方向に整理して、原稿にするのがプロの物書きの技術かもしれません。しかしそうして活字として固定化されてしまった後にも、僕の人生は続くし、僕の中の映画も続くのです。

いつしか、そういう映画体験そのものと、伴走する媒体を作れないかと思い始めました。

映画について、日々考えたり、書きとめたり、作った人と会ってみたり、その映画について誰かと話してみたりする。生成変化するメランコリーを、読んでいる皆さんに投げかけたく思い、このメルマガを出帆させることにいたしました。

これから私が書くものに対して、ある時は気分が共有できたり、またある時は異論もあるでしょうが、映画が自分の人生の一部だと思える人は、「映画の友」だというのがすべての前提です。

一緒に船に乗って頂ければ幸甚です。

切通理作