映画は待ってくれる

メルマガ『映画の友よ』
先週末より発行の第5号、まえがきを以下に転載
します。
http://yakan-hiko.com/risaku.html


■ごあいさつ

私事で恐縮ですが、今年の2月21日、50歳になります。もう半世紀生きたことになります。

3月21日に公開される『ウォルト・ディズニーの約束』は、奇しくも私の生まれた1964年に公開された映画『メリー・ポピンズ』のバックステージものとして、意外な真相が明かされる作品です。

この映画を見る事で、私にとっての『メリー・ポピンズ』も完成したかのような、不思議な気持ちになりました。

また、誕生して45年になる『男はつらいよ』シリーズは、渥美清さんが亡くなって新作が作られなくなってから20年近く経ちますが、その間も、色んなかたちで生き続けている作品です。

男はつらいよ』を見て育った僕と同世代の娯楽映画研究者・佐藤利明さんが、どのようなやり方で、現在に生きる寅さんをアップデートな存在として再生し続けることに寄与しているのか、お話を伺いました。

今回の佐藤さんの発言に「映画は待ってくれる」という言葉があります。映画は確かに同時代体験という要素が重要です。けれども、その時見てわからなかったものが「再発見」できる。その日まで、映画は変わらず待っていてくれるのだという佐藤さんの言葉に、ジーンときてしまいました。

一方、演じる役者さんにとっては、繰り返し上演できる演劇と違い、そのままの形で残ってしまう映画は、それゆえ「待ってくれない」ものなんだなと、『アイドル・イズ・デッド』で印象的な活躍をみせた女優・和田みささんに今回インタビューしていて気付きました。

今号の特集は、「半世紀をかけた『問い』」と、「映画と身体」です。
映画は、一方で我々を待っていてくれるものであり、一方で、その時々の、とりかえのきかない身体性が焼きつけられる場ではないでしょうか。

前号のレビューで「<快作>とはこのような映画のためにある言葉であろう」と書いた、女子の地下プロレスでの肉体のぶつかり合いと、ジェンダーの入れ替わりを一本のドラマに昇華させた映画『赤×ピンク』(22日から公開)。
この映画の脚本を書いた港岳彦さんに、桜庭一樹原作との「格闘」を語って頂きました。

創刊号から応援している映画『華魂』(公開中)ですが、今回ついに監督の佐藤寿保さんの登場です。寿保さんの話は、ハッキリ言って何を言いたいのか、聞いていてもわかりません。でも気持ちが伝わってきます。言語にできないもどかしさの中に肉体性があります。「こうやって演出しているのだろうな」と思わせるものがあります。

連載寄稿をお願いしている丸茂透子さんには、ストリッパー出身の、踊り続けるハリウッド俳優・チャイニング・テイタム論を書いて頂きました。

その一方、前回から連載をお願いしている、レンタルビデオ店「カセット館」の後藤健児さんの寄稿では、ゲームと映画とをバーチャルに往還する時、「ゾンビ」というキーワードが欠かせないということが書かれています。

身体がボロボロになって、朽ち果てても生き続ける夢の残骸。映画という近代の夢の墓場について、私も自分の連載記事『特撮黙示録1954〜2014』で書かせて頂きました。今回は円谷英二監督畢生の企画『ニッポン・ヒコーキ野郎』についての考察の最終回です。

今回も射程の広い、ダイナミックな運動性のあるメルマガとなったのではないかと思っております。新作レビューともども、ご愛顧願えれば幸いです。 



目次

[01]特集・半世紀をかけた「問い」
1 長編批評『ディズニーの約束』〜父親としてのメリー・ポピンズ
2 対談『男はつらいよ』と僕たちの50年〜寅さんの“ことば”を伝えるということ
佐藤利明×切通理作 

[02] 特集・映画と身体、そして原初の記憶
1 『赤×ピンク』脚本・港岳彦に聞く、桜庭一樹原作との「格闘」
2 寄稿 眼福女子の俳優論  筆・丸茂透子 ストリッパー出身の、踊り続けるハリウッド俳優・チャイニング・テイタム論 映画『マジック・マイク』より
3 この身体能力に女優魂を見た!『アイドル・イズ・デッド』DVD発売記念・和田みさ(「MOOSIC LAB」女優賞)インタビュー 
4 『華魂』ファイナルトーク 監督・佐藤寿保が語る 「おぼこ」と「糠床の匂い」に原初の記憶がある

[03] 日本映画ほぼ全批評
魔女の宅急便(実写版)
・愛の渦
・相棒 劇場版3
・トリック ラストステージ
・年上ノ彼女
・いんらんな女神たち
・ジャッジ!
・ほとりの朔子

[04] 新連載・カセット館長の映画レビュー  寄稿・後藤健児
第2回 ゲームと映画をつなぐ「ゾンビ」の歴史 

[05] 連載寄稿 女子ときどきピンク映画 筆・百地優子(脚本家) 第5回「お正月映画としての『痴漢電車』」

[06] 連載・特撮黙示録1954−2014 第4回 円谷英二ライフワークのもととなった稲垣足穂の『ニッポン・ヒコーキ野郎』と<飛行機の墓場>がつなぐ『風立ちぬ』への射程

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