仮面ライダーとの出会い

  僕らの時代はクラスに一人は「優等生!」っていう感じのわかりやすい子がいた。テレビドラマではメガネ君として描かれるような。
  遊びに誘っても勉強していて出てこないような子。
  そんな子であるクラスメイトのI君が教えてくれた番組が「仮面ライダー」だった。Iくんの家は駅の近くの比較的賑やかな所にあったのを思い出す。
  悪い博士が暗い部屋で実験して、人間が怪人になるこわい番組で、すごく面白いから見てみろというのだ。
  それで興味を惹かれて初めてこの日見たのが第4話「人喰いサラセニアン」。
  たしかに全編夜のシーンばかりで、夜目に光るライダーマスクが印象的だった。
  いちばん記憶に残ったのが、若い女性がサラセニア人間によって地中に引っ張られて姿を消す植物園のシーン。
  サラセニア人間は言葉をしゃべらない怪人なのだが、番組を初めて見る私は「普段」を知らなかったのだからその印象はない。
  この回から私は「仮面ライダー」をほぼ毎回見るようになる。

  はじめ「仮面ライダー」というタイトル自体が不思議だった。「月光仮面」「ウルトラマン」みたいな全部漢字でもカタカナでもないのは新鮮だった。仮面をつけた人がバイクに乗っている状態が「仮面ライダー」なのかなと思っていた。
  初期は有名な変身ポーズもまだなく、バイクに乗って加速するとバイクとともに人間も変身していた。

  この日のスペクトルマンは空飛ぶ鯨サンダーゲイの前篇だった。両手両足の付いた着ぐるみではなく巨大な鯨が空を飛んでいたのが印象的だった。サンダーゲイの電流にやられて落ちたスペクトルマンが下界に被害を与え、運ちゃんとかから罵声を浴びせられていたのを覚えている。
  僕は「しょうがないじゃないか、スペクトルマンだって大変なんだゾ」と大人の無理解に怒っていた。