怪獣カード

  
  たぶんこの日も日曜学校に行っていたのではないか。
  僕が通っていたキリスト教の幼稚園はつまり教会の敷地内にあり、そこに私は卒園後も「日曜学校」として通っていた。
  教会のすぐ近くの五叉路に駄菓子屋(といっても店の半分は文房具)があり、そこで一枚五円の怪獣カードを売っていた。僕は教会の献金用に渡された小銭の一部をくすねて怪獣カード(僕たちは「怪獣写真」と呼んでいた)を買ったりした。
     
  そのお店はお店自体が「五叉路」と呼ばれていた。ちゃんとした名前もあったが覚えていない。「松なんとか」だった気がする。松本か、松山か、思いだせない。
  怪獣写真は別の地域のお店では一枚十円で売っていたと聞くから、その意味では五叉路は良心的だったのだろう。
  でもお店のおばあさんはけっこう子どもに厳しく、ラッキーカード(のちのライダーカード以降の、アルバムがもらえる小さいサイズ)などは、その場で交換しないと、後で持っていってもダメだった。
  怪獣写真は、なんの番組でもない、オリジナルな怪獣のイラストがカードになっているものもときどき売っていた。そういう写真を見て、頭の中でオリジナルなお話を想像したりした。
  親は「怪獣写真って言うけど、あれは写真じゃなくて印刷」と指摘した。その意味は、もうちょっと成長してからわかった。