『イキガミ』に、松田優作の若い頃を見た


   滝本智行監督作品『イキガミ』見る。
   奇想といっていい設定だが、一つ一つのドラマが丁寧で「人間」がちゃんとそこにいる。
   映画の内容自体は奇想にひきずられず、時代を超えた人間ドラマになっているのがいい。
   イキガミを届ける松田翔太の演技も悪くない。
   父松田優作が『太陽にほえろ!』でテスト出演した際の、福祉施設の係員の役を思い出した。規則に従わなければならない、しかし内側では矛盾を感じている繊細な役だった。
   その体格もありワイルドなアクションスターの部分が目立った松田優作だったが、足を数センチ切りたいとまで思いつめたこともあるという。演技の的確さと繊細さは子ども達に受け継がれているのかもしれない。

   山田孝之はいつもの「弟キャラ」ではないので一瞬「どこかで見たことのある人だけど、誰だろう」と思ってしまった。それだけこの映画での彼も良かったと思う。

   笹野高史もいつもの人情派とは違う役柄で印象的だ。

   役者の素材を生かしながら、魅力を違った形で見せるのも滝本智行監督の力なのだと思う。