何も書けなかったらどうしよう


   
   『生物と無生物のあいだ』書評を午前十一時まで無事書きあがる。
   わかりやすいとはいえ、自分とは畑違いの理系の本なので、いつもの書評より時間がかかった。
   無事入稿し、ひと安心。
   メモを整理する手順を一度スケジュール表にして三十分刻みに消化して完成。
   短くても、勢いだけでは書けない題材だ。

   終わって、いま東京に来て泊まっている関西に住む親戚と家族と昼ごはん一緒に食べる。

   午後は原田昌樹監督本の取材で、現在映画監督として活躍中の方から、原田組助監督だった頃のエピソードを伺う。
   原田さんの「スーパー助監督」ぶりがヴィヴィッドに伝わってきた。大いに感謝。
   その方曰く、いまの映画界はプロデューサー主導になってきて、以前に比べれば、助監督が監督になりやすい状況にややなってきていて、職人監督が活躍する舞台も出てきているとのこと。そしてアイドルの事務所が「脱ぎ」を厳禁するので、原田監督が好んだようなプラトニックな青春映画も増えている。原田監督が映画で活躍する時代はもうそこまで来ていたのではないだろうか。それだけに人生の時間自体が間に合わなかったのが惜しまれる。

   取材は渋東シネタワーの上の喫茶店だった。
   ここは意外に静かなので待ち合わせにいいなと思った。
   帰りはツタヤに行って、参考資料のDVD借りる。ついでに吉田拓郎の「ローリング30」CD借りた。佐々部清監督『結婚しようよ』を先日見ていたら劇中流れる数々の拓郎節に魅せられ、久しぶりに聞いてみたくなった。中学時代は拓郎ファンで「ローリング30」も買ったが当時はアナログ盤。


   ツタヤの6Fの喫茶店で、献本いただいた直井卓俊さんの「SPOTTED701」7号めくる。
   ビトさんの「何も書けなかったらどうしよう」という不安を抱きながらのレビュー(城定秀夫監督『デコトラギャル奈美』に対する)での筆致に共感する。
   以前斉藤孝さんが「いま喋っていることが相手に伝わってないんじゃないかという不安を持つことは大事」と書いていて、たしかにそうだなあと思ったが、「何も書けなかったらどうしよう」という不安を手放さないことは大事なのではないか。
   『生物と無生物のあいだ』の書評はあんなに短くても最初そう思ったのだから。でも、それが書いているうちに確信に変わる瞬間はやはりあり、それは醍醐味だと思う。

   献本いただいた「SAPIO」でめくる。
    小林よしのりさんの『ダークナイト』評に始まるアメリカの正義の話、宮崎駿監督が言っていた、「アメリカは世界で一番軍隊での戦死者を出している」という言葉と自分の中では響き合った。

   このツタヤ6Fの喫茶店はいい。なんか「街」って感じがする。近くの席ではみんな思い思いの自分の作業やっている。パソコンもある。
   ロコモコもある。今度来たら食べてみたい。

   帰宅途中高円寺のハチミツ屋に行き「くまボトル」のハチミツ買う。『サンタ服を着た女の子』でイラストコラムなど多大な寄与を下さったチムニーさんの個展会場だったところで、そのときに買っておいしかったのだ。同じ商店街で高円寺文庫センターに寄ったら、「SPOTTED701」が紹介されていた「映画時代」創刊号があったので買う。
   数ヶ月ぶりにこの通りにきたらドラマの古書店があってビックリした。

   夜、『一九歳の地図』全部読もうと思ったがなんとなく疲れて眠ってしまった。
   就寝前に「SPOTTED701」7号に文章書いてた監督さんから電話。偶然に驚く。来月公開の新作撮ったとのこと。楽しみだ。