高久進さん追悼、上原正三さんと対談

    発売されたばかりの「刑事マガジン」8号で、脚本家の高久進さんの追悼特集を担当しました。

   単に作品を振り返ったり、過去のインタビューを振り返ったりするだけではないものを……と思い、僕の中に浮かんだのは、「Gメン’75」初期の高久さんの傑作のひとつである、沖縄ロケ編三部作です。

  基地の町・沖縄で銃口に曝され生きている人々。煙草をフェンスの外に投げ捨て、通行人に拾うのを促し、フェンスに入ったところで銃殺、という「ゲーム」に興じる米兵。あるいはジープの上から農作業する住民を狙い撃ち。そして占領下の沖縄では日本人がアメリカ人をレイプすると死刑、逆は無罪という差別的な法律がまかり通っていた。その中で犠牲となった女子高生。訴え出た彼女達を辱める日本人の裏切り者。狭い島でその後生きるためには米兵相手にパンパンをやるしかなく、せめてもの復讐として性病を移している。そして銃の横流しをしている不良外人もフェンスの中に逃げ込めば無罪放免。

  こんな現実を三週間に渡って見せ続け、最後は沖縄人のゲスト全員が死亡……と視聴者をトラウマ世界に投げ込んだ沖縄三部作についてかつて同じ「刑事マガジン」で高久さんにインタビューしたとき「中途半端にやるより全員殺してしまった方がメッセージになると思った。でも今から考えると、あれは僕じゃなくて、沖縄の人が自ら書くべきだった」とおっしゃっていました。

  その時以来、僕の頭には「上原正三さんがこの沖縄編を見たらどう思うだろう」ということでした。
  上原さんは、沖縄出身で、日本本土で異邦人である自分にこだわり、宇宙人や怪獣など、異質なものと人間が混在する子ども番組一筋に脚本を書き、「日本人だけのホームドラマは書けない」と任じていた人です。かつて僕の処女単行本「怪獣使いと少年」で上原さんのことをインタビューして書いた「上原正三 永遠の異邦人」という章があります。先ごろ45年のお仕事をまとめた「上原正三シナリオ選集」を出されています。

  今回、生前の高久さんとも仲の良かった上原さんに、この三部作のDVDを見ていただいてから、上原さんと一緒に高久さんを振り返る対談を企画しました。
  この企画に理解を示してくれた「刑事マガジン」編集部の皆さんに感謝します。

  高久さんは、生前、自分がこの沖縄編を書いたことを上原さんに一言も言わなかったそうです。

  果たして上原さんは「ヤマトンチュー」の高久さんの書いた沖縄編をどう見たのか?
  そこには、単に米軍の犯罪というだけではない、もう一つの歴史が見えてきます。
  ぜひご一読ください!
  そして上原さんの口から語られる、自ら手がけた幻のドラマ「紅い稲妻」で、タブーを冒して復讐の対象とした相手は誰か?
  沖縄とアメリカ、そして日本の間に流れる、第二次世界大戦すらも超えた時空の渦に見えるものとは……「ちゅらさん」の癒しの沖縄というベールを剥がした世界が広がります!