さそり監督と「かわいいトラウマ」しじみちゃん

  
  コアマガジン「ニャン2倶楽部Z」での連載『ピンク映画時放』は毎回ピンク映画にかかわるスタッフ、出演者の人たちにお話をうかがっているのですが、いま出ている3月号のゲストは、女優・しじみ持田茜改め)さんです。
  取材の当日には、しじみさんの、ピンクではなく自主映画の主演作『カルトムービー』のさそり監督も同行してくださり、監督のご発言も一緒に掲載させていただいてます。

 さそり監督はジーコ内山さんの名前で『藪の中』『突入せよ!「あさま山荘」事件』等多数の作品で役者さんとして活躍され、僕もその独特の風貌とお芝居は印象に残っている方でした。
 ライターの仕事もされ、一癖も二癖もある奇人変人をプロデュースされてきた方です。
 喋り方が枡野浩一さんに非常に似ている方です。頭の中で風貌を消して声だけ聴いていると枡野さんと話しているような気になります。 

 『魂のアソコ』『カルト・ムービー』等、さまざまな面白い個性の芸人さんや、知る人ぞ知るミュージシャンの饗宴を演出されているさそり監督。
 現実の人間が妖怪変化みたいに見える、まさにカーニバルというか、公園や歩行者天国、道端といった野外の空間をそのままセットに見立てたような撮り方。そこには都会に生きる一人ひとりの外界に対する距離感も併せ表現されているようで、悪夢的のようでもあり、また楽しげでもあり、そこにはやはり届かないせつなさもあります。

 『魂のアソコ』(http://www.tensaibaka.sakura.ne.jp)は構想・製作に十年かかった、92年に自殺した漫画家・山田花子の原作を得て、原作者家本人を思わせる暗く恵まれない漫画家女子がヒロイン(『臨死!江古田ちゃん』の瀧波ユカリさんが挿入歌を歌っています!)ですが、『カルトムービー』のしじみさん演じるヒロインも、姿かたちは可憐ですが、同じような内向的なパワーと裏返しの爆発が感じられます。『カルトムービー』は『魂のアソコ』にも潜在的にあったキューンとするせつなさがより表に出ている気がします。

 おもちゃのカエルだけが話し相手だったしじみさんの女子高生に初めてボーイフレンドが出来るまで。メガネッ子どうしの純愛映画です!

 昨年に公開されて好評を得、近く再公開もされるそうですが、楽しみですね。
 
 さそり監督は、ライブハウスで萌え系アイドルの格好をしてアイドルの曲をかけていたしじみさんと初めて会ったそうです。
 AVに出ていることは当時知らず「処女じゃないかと思った」とさそり監督。「AVのパッケージのえげつなさが会った時の彼女と全然結びつかない」とおっしゃいます。

 ピンク映画に「持田茜」として四年前に初めて出演した時の作品がたまたま取材場所の新宿の映画館で再上映されていたので、本物のしじみさんと当時のポスターの2ショット写真を今回の誌面に載せたんですが、全然今の方が<女の子>っぽいと思うんです。

 たぶんきっといまは、二十代の彼女から見た、表現された「少女」になっているんじゃないかと思います。
 ササカマリス子さんとのアイドルユ二ット「中学生時代」の持ち歌であり、『カルトムービー』の挿入歌である「セパレート1986」の出だしなど、一度耳にするともう頭から離れなくなります。
 http://www.youtube.com/watch?v=hz9r-U18VQg
 まさに「かわいいトラウマ」です。
 しじみさんはいわゆる「ヲタ芸」的振りが好きで、アイドルオタクの男……ではなく本物の女の子がオタクとして歌い踊っているという、パラドックスな存在になっています。

 先月31日に行われた渋谷クラブEFFECTのライブに行ったんですが、出番が来るまでに控室にいる……とかじゃなく、始まるまでも既にフロアに居てヲタ芸で踊っており、終わってもまた踊り続けているという、前後左右の空間を取り外した自由人・しじみさんの魅力の、ホンの片鱗でもつかまえられたら……と四苦八苦した記録が今月の「ニャン2Z」です。
 ぜひご一読くだされば幸いです。

 そしてさそり監督作品の再上映と、しじみさんが出ているという、いま作られているさそり監督の新作が楽しみです。さそり監督からはキリミヤラジオに出てくださるといううれしいご提案をいただきました。
 宮川ひろみさんから収録用の機材をお預かりしています。上映会の際でも、いつでも、機会をお待ちしておりますよ!