スキルを語れる人・『ジョージ・ポッドマン』『空から日本』高橋さん

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最新第3号では、前号に引き続き、
『ジョージ・ポッドマンの平成史』『空から日本を見てみよう』等を手掛けてきた、テレビ東京の制作局プロデューサー・ディレクター・カメラマンである高橋弘樹さんに映画について伺っています。

そこで高橋さんが挙げてくれた「感動したドキュメンタリー映画」は、ものすごく意外な映画でした。

僕も見ていた映画なのですが、高橋さんは文字上で学んだ歴史と、現実の街に存在する生きた人間との接点に興奮するお方。

僕とは、<ツボ>なところが違うのを、高橋さんの方がツッコミ返しています。

実はこのインタビュー、聞き手であるはずの僕が訊き返されている局面が何度かあるのを、そのまま採録しています。

これがもし雑誌の記事とかだったら文字数調整の段階でカットしているかもしれませんが、個人メルマガの利点だなと思いました。

その場にいる人間同士共感ムードが立ちこめそうなところで、あえて「違和感」を見つけていこうとする高橋さんの取材者としての鋭さが、取材を受けている時にも見え隠れしました。

この「違和感」というのは、必ずしも否定的、懐疑的な意味ではありません。

「この人と自分は違うな。なぜなんだろう。この人は同じ物事でも、何をそこに見出しているんだろう」という興味です。

そして訊き返されることで、こちらが逆に、いつも宮崎駿のアニメや、寅さん、そして件のドキュメンタリ映画をどう見ていたのか、発見し直させられました。

たぶん読者のみなさんも、自分の映画の見方を再発見出来るのではないかと思います。

そして後半、「画面を強くする最終手段」の話題になります。
テレビ局の先輩から、自分の撮影した、一つ一つの画面の意図を全カット説明せよという荒行シゴキに耐えた高橋さんは、たとえどんな条件でも、必ずそのカットをもう一つ「強く」する工夫を忘れません。

その工夫もまた、「違和感」を見出そうとする、いまや高橋さんの「本能」となってしまったかのような能力と、僕には重なって見えました。

そしてスゴいのは、高橋さんは自ら培ったそのスキルを、持ってない人に語る力がまたハンパじゃない!ということです。

インタビュー採録は二回目になりましたが、今回は特に、これから映像を作ろうという人には絶対役に立つものだと思います。

高橋さんの『TVディレクターの演出術――物事の魅力を引き出す方法』という本は、まぎれもなく昨年出た名著の内の一冊であり、映像クリエーター志望の人も、テレビ番組に限らず作品のひとつひとつの要素に対するこだわり方を知りたい人にも必須の一冊です。

その高橋さんに、先輩からのシゴキの内実をより具体的に知れたのも、ご本人は大変な経験だったでしょうが……楽しかったです!

そしてインタビューは次回も続きます。




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『映画の友よ』第3号・目次

[00]ごあいさつ

[01] 新春対談 2013年のトピックを振り返る
 山川賢一×切通理作 「世界にコミットメントすること/しないこと」
1 『風立ちぬ』で宮崎駿が示した「最後の扉」
2 『魔法少女まどかマギカ』に見る「青春という虚構」

[02] 映画の友よ2013年イチオシ映画『マリア狂騒曲』トークショー採録
 井土紀州×切通理作 「震災後の『ハムレット』と『罪と罰』」

[03]特撮黙示録1954−2014
第二回 市川森一の原点『快獣ブースカ』と『かぐや姫』をつなぐもの。そして『おもひでぽろぽろ』との相関関係

[04] いまおかしんじに聞く「いじめの原風景は、掃除用具のロッカーの中から見た教室」(1月公開佐藤寿保監督作品『華魂』脚本) 前篇

[05] 創刊記念インタビュー 『ジョージ・ポッドマンの平成史』『空から日本を見てみようテレビ東京ディレクター・高橋弘樹が映画を語る その2 
「僕を震えさせたドキュメンタリー映画と、画面を強くする最終手段」

[06] 日本映画ほぼ全批評

・永遠の0
利休にたずねよ
仮面ライダー×仮面ライダー 鎧武(ガイム)&ウィザード 天下分け目の戦国MOVIE大合戦
・麦子さんと
・なにもこわいことはない
・女教師 秘密の放課後
・尼寺 姦淫姉妹

[07] 連載・セクシー・ダイナマイト
第2回 あなたは娘に「AV女優」と言えますか? 宮村恋改め、黒木歩さんに聞く

[08]連載寄稿 女子ときどきピンク映画 筆・百地優子(脚本家)
第3回「さて今更、女性とエロについて」

[09]映画の友よイチオシ映画『花火思想』公開前連続トーク 第二回
「音が聴こえてこないことに、ロックがある〜ホームレスと4ヶ月の共同生活で得たもの」
ゲスト・大木萠(監督)、阿佐谷隆輔(脚本・撮影)

[10]編集後記と告知

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