時代と対話する映画

 
 昨晩メルマガ「映画の友よ」第4号配信になりました。

 http://yakan-hiko.com/risaku.html

 その序文を、以下に全文引用します。

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■はじめに

山田洋次監督は、1961年にデビューしてから、本数で割れば平均一・五年に二本ずつは映画を撮っていることになりますが、連続した時間として捉えても、作品と作品の間を二年以上空けたことが一度もありません。

これは驚異的なことです。どんな監督にも、立て続けに作品作りが出来る時期と、雌伏の時があるからです。山田監督は半世紀以上、時代と対話する現役監督であり続けているのです。

1月25日から、山田監督の82本目の新作が公開されます。

私は本メルマガがスタートする前から、その新作『小さいおうち』を見て、ぜひ特集をしようと、待ち構えていました。

この作品、僕はいまから数日前もまた最終試写に行って見ましたが、山田監督がなぜ常に時代と判走した存在であり続けているのかが、わかる映画です。

一見瀟洒で、優しくあたたかい世界に見えながら。昨今の、物事が単純化し、不和雷同的に大声でものを言う側についていってしまう社会の風潮を、内側から撃つ力を持っています。

今回、ぜひ対談したいと思っていたのが、寅さんマスターこと娯楽映画研究家の佐藤利明さんです。佐藤さんは文化放送の『みんなの寅さん』はじめ、『男はつらいよ』ならびに日本の黄金期のプログラム・ピクチュアを語ったら右に出るもののいない人物です。

佐藤さんは同時に、動きゆく時代を敏感に捉える視座を持っています。

本メルマガは社会問題のメルマガではありません。しかし映画作品の解説やパンフレットには載り切らない「作品とともにある時代」から目を逸らさない対談になったと思います。ぜひご一読ください。

そして2013年末には、悲しいニュースがありました。映画監督・渡辺護さんの訃報です。渡辺護監督は山田洋次監督と同じ1931年生まれ。ピンク映画の創生期から活躍し、美保純、可愛かずみ東てる美といったいまでも知られている女優たちを見出し、デビューさせた人でもあります。

わかっているだけでも200本以上の作品を撮り、82歳で逝去されましたが、2008年まで新作があり、さらなる新作を撮る直前まで話が進んでいました。

渡辺護監督は、いつも、自分が撮る映画はどうあるべきなのか考え続け、時に理論化し、実践に活かし、その間に僕ら映画ファンにも惜しみなく語りかけてくれる人でした。後進の若者たちとの対話も欠かしたことはありませんでした。

渡辺監督が映画について語る姿を思い浮かべるだけで、僕もまた、監督が映画とともに生きた幸福な時代に連なっているような気になります。

今回は追悼特集を通して、それが何だったのか、見つめ直していきたいと思います。

そして今回は新たな執筆者による連載も始まります。DVDやブルーレイの時代に、VHSで映画の貸し出しをして、知られざる作品を世に残そうとしている後藤健児さんです。

第一回の原稿は、『劇場版 魔法少女まどかマギカ [新編]叛逆の物語』をめぐる、前号の山川賢一さんとの対談に対しても新たな視点を加えるものだと思います。