キネ旬がライバル!『映画の友よ』2月下旬号の抱負

『映画の友よ』は配信頂いている夜間飛行さんのシステムに準じ、月二回の発行とさせて頂いてるのですが、考えてみれば、月二回、隔週の映画雑誌といえば、キネマ旬報と同じ!

これからはキネ旬を心のライバルとし、精進していきたいと思います。

先週末より配信中の『映画の友よ』の2月下旬号(第6号)、以下に「まえがき」の全文を記します。


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2010年の『海炭市叙景』、今年の4月に公開を待つばかりの『そこのみにて光輝く』と小説が映画化され、昨年末には本人を追ったドキュメンタリー映画『書くことの重さ』も公開された作家・佐藤泰志。その作品世界がどんなものだったのか、もう一回めくり返してみようというのが、今回冒頭の長編批評です。

このメルマガの創刊前から構想し、三か月をかけた、真正面からの作家論です。といっても文芸誌に載るような肩肘張った評論にはならないように、映画や音楽の世界と出会う通路として書きました。

そして今回、23年ぶりにニュープリントで公開された映画『トパーズ』(原作・監督村上龍)について、現役のSM女王様と対談するという楽しい企画も行いました。

実は『トパーズ』の原作も、『そこのみにて光輝く』の原作も、同じ1989年に発表されたものなのです。

かつて『限りなく透明に近いブルー』で芥川賞を受賞し、時代を牽引する作家だった村上龍。片や、何度も芥川賞の候補になりながら、一度も受賞せず、死後ふたたび広く読まれている佐藤泰志

この二人の作家の描いたものが、昭和から平成、そして現代と移り変わった時間を見つめ直す時、どのように交叉したのか、その辺も着目して読んでくだされば幸いです。

いまを考えることは過去を考える事につながり、過去を捉え直すことがいまを考えることにつながる。そんなことをこのメルマガを続けていくことで、日々発見しています。

僕はいつも、自分がどう歩いてきたのかを知りたいと思っています。

ここ数号、「娯楽映画研究家」の佐藤利明さんとの対話を重ねる事で、山田洋次作品を始め映画の鑑賞体験について思考を深めてきました。

山田監督の新作『小さいおうち』で実は、世代間の逆転現象が起きているということを、語る人はまだいなかったように思います。時間は決して一方向にだけ流れているのではないと気付かされた対談でした。

そして映画というのは「体験を作り出す」ものだということも、改めて認識できました。今回の後藤健児さんの寄稿では、視聴環境によって変わる映画体験について展開して頂いています。

このメルマガは日本映画を中心にしていますが、「世界の中の日本」を意識して、外国の映画を見るという視点も必要だと思い、こちらもまた、創刊前から準備していた山口あんなさんの新連載が今回から始まります。

僕の連載『特撮黙示録1954−2014』はいよいよ、今年ハリウッドで新作が公開されるゴジラ映画の話題に突入します。いままであまり語られてこなかった、シリーズ映画としてのゴジラ東宝特撮映画について語るために、あえてシリーズ三作目『キングコング対ゴジラ』から話を始めています。

もののけ姫』が公開されるまで、その観客動員記録が破られたことがなかった『キングコング対ゴジラ』。日本映画黄金期という時間軸がこのメルマガに入ってくることも、また楽しんで頂ければ幸いです。


■映画の友よ 2月下旬号
http://yakan-hiko.com/risaku.html

[00]ごあいさつ

[01] 長編批評・映画と佐藤泰志〜『そこのみにて光輝く

[02] いよいよ公開!『赤×ピンク』脚本・港岳彦さんに聞く 
原作者・桜庭一樹さんからの「エール」とは?

[03] 「映画は記録媒体じゃない、体験なんだ」
寅さん・日活・歌謡曲佐藤利明さんに聞く「娯楽映画研究家」という仕事

[04]特集・映画とフェチ

1 セクシー・ダイナマイト 23年ぶりに公開『トパーズ』(原作・監督村上龍)をSM女王様・更科青色さんと見る〜バブル時代の進化・退廃・フェティシズム

2 ザ・女優魂 幻の映画『水着妻』とは何か 全カット水着で主演!和田みささんに聞く

3 カセット館長の映画レビュー  寄稿・後藤健児
視聴環境フェチ!? 同じ映画で変わる映画体験、そして「キノコ雲と少女」

[04]日本映画ほぼ全批評

・抱きしめたい
土竜の唄
サクラサク
黒執事
・LラブDK ラブ同居!
・異父姉妹 だらしない下半身

[05] 連載寄稿 女子ときどきピンク映画 筆・百地優子(脚本家) 第6回 初めての○○〜オムニバス企画でピンク祭り

[06] 新連載 世界を知るための映画 筆・山口あんな 
第1回 天使の分け前格差社会でチャンスをつかむ「さえたやり方」 

[07] 連載・特撮黙示録1954−2014 第5回 『キングコング対ゴジラ』前篇〜語られてこなかった<シリーズものとしてのゴジラ映画>

[08]編集後記と近況

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