レイプゾンビが最後に語ったもの

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 ついに本日から一週間、池袋シネマ・ロサでレイトロードショーされる『レイプゾンビ完結編〜新たなる絶望』を記念して、『映画の友よ』14号(6月20日配信)に掲載したレビューを以下に全文掲載します。


■レイプゾンビ完結編〜新たなる絶望

まだ一作目で、続きが出来るほどヒットするかどうかもわからないのに、物語の核心にある陰謀の正体を明かすのを先送りにして、次につなぐ終わり方をする映画がある。

しかし一作目というものは、余韻の部分で次につながる部分を残すのはいいが、まずその一本で完結したものを出して、お客の支持があるのがわかったら、今度はパート2で、その追い風を受け、堂々と3への続きというものを押し出すのが、セオリーではないかと思う。

アメイジングスパイダーマン』だって『スター・ウォーズ』だって、『テルマエ・ロマエ』だって、そうやっているではないか。

その点、『レイプゾンビ』シリーズは「わかっている」作りになっている。前作の『レイプゾンビ3』のラストで女剣豪・亜紗美と女アンドロイドのあいかわ優衣が対峙したところで「つづく」となったわけだが、今回はその対決から幕を開けるのだ。

ちなみに『レイプゾンビ』の「2」と「3」は一つの話の前後編なので、今回の「4」たる『クローン巫女大戦』とそこに続く完結編の「5」たる『新たなる絶望』は、お話的には第三部ということになる。劇場版では「4」と「5」はともに『レイプゾンビ完結編〜新たなる絶望』として一本にまとめて上映されるそうだ。

AV女優であり、普段ストリッパーとしてダンスに磨きをかけるあいかわ優衣のきびきびしたアンドロイドぶりと、それに跳ね飛ばされ、やられながらも立ち向かう亜紗美。

実は双方の動きをいまや国際派アクション女優となった亜紗美が、友松監督の演出のもとで付けているのだが、人間対ロボットのメリハリあるこの戦いは、たとえば『キカイダーREBOOT』では何と何が戦ってもおんなじように見えてしまったのと比較しても、溜飲の下がる見応えとなっている。

常連的に出演している井口昇監督の新作『ライヴ』では前半地味な主婦役をあえて引き受けてみせたかと思いきや、後半モスゴジのように頬をブルブル震わせたのを契機にアクション全開になった亜紗美だが、『レイプゾンビ』でも前回は登場場面が抑え気味で、今回「待ってました!」とばかりにしょっぱなからオッパイを出しながら死闘を繰り広げるのは頼もしい。

あいかわ優衣にシャープな鉄拳を繰り出すものの、その硬いボディに亜紗美の方がうめき声を上げる。パイプで殴りかかっても曲がってしまう時の、ショックな表情。

だがやがてメカむき出しになるあいかわとの間で肉弾戦に持ち込み、その身体に抱きつきともに爆破!
やっと壊れる女アンドロイドだが、最後っ屁のビームが本作のキーパーソン的キャラ・モモコ(小林さや)に当ってしまう。

モモコを愛するナース・ノゾミ(めぐり)は悲嘆にくれて泣き叫ぶが、作家であるリアルオタク中沢健演じるノボルは惨状を遠巻きに気持ち悪がって傍観するだけ。

モモコが残した赤ちゃんを抱き上げながら、ノゾミは気になることを言う。
「また今度も助けられなかった……」

彼女はエクスタシーに達すると時空を超える「アクメループ」という方法で、未来から何度もタイムループしていたのだ。

ここで視聴者は気付く。『レイプゾンビ』パート3でノゾミがモモコを想ってオナニーする場面があったのは、そういうことだったのか……と。

これまで友松直之作品は、時空を越えて別の場所のセックスシーンを同時並行で描いてきたが、今回それが初めて理論化されたと言ってもいい。

だが『まどマギ』のほむらのように何度ループしても、その都度モモコを救えないノゾミに、ノボルは提案する。
男と女の友情が成立すれば、未来を救えるかもしれないと。

イムループして、高校時代のラグビー部室にやってきたノゾミ。
一作目から語られてきた、ノゾミのトラウマ体験たる、ラグビー部員の男子たちにレイプされた過去に戻ったのだ。

そして、同じ高校の生徒としてタイムループしたノボル。
彼は映研でゾンビ映画を撮っていた。
そんな彼らを邪魔にするラグビー部員。
まるで『桐島、部活やめるってよ』の学内カーストの描写だ。

またノボル役の作家・中沢健の書いた『初恋芸人』からの引用も、場面として再現される。
中沢健が主人公のトラウマとして描いた、いじめっことクラスの女子が共犯となっておとしめられた過去が再現される。

ノボルたち非モテ系オタク男子をキモがっている学校の女子たち。

スポーツマンに発情し、非モテ系オタク男子を排除する女子たちは、一緒になって非モテ系オタク男子を踏みにじっていることになる。そんな女子たちは、やがて発情したスポーツマンたちに輪姦される。だが人間性をふみにじられるという点では、どちらも同じではないか。それをこの作品は明確に押し出すのだ。

一作目で描かれたノゾミら女たちの男全般への失望と怒りを、「いやそんなのは自業自得だよ」と捉え直したのだ。

レイプされ、ショックでリストカットしようとするノゾミに通りすがりに気付き、おそるおそる覗きながら気遣うノボルに「うぜえよ、このキモオタが。うぜえんだよお」と思わず当たり散らしてしまうノゾミ。その顔がCGで鬼の面になって刻印される。

その後、学校の通学路で、映研仲間に、自分が撮りたい映画の構想を話すノボル。そのタイトルは『レイプゾンビ』。「愛は地球を滅ぼすんだ」と自らのテーマを語るノボル。

こうしてレイプゾンビサーガは完結した。
学校でノボルを貶める女生徒たちは、これまでシリーズに出演してきた女優が、可能な限り集められた。
追加ギャラも出ないのに、撮影に参加した女優達のこの作品への思いは、作中の絶望と裏腹にホットな気持ちをもたらしてくれ、唯一の救いとなっている。

オリジナル発想で、同時代の色んな文化も吸収しながら、ここまでの世界観をまとめあげた友松直之のパワーに、敬意を表したい。

ラスト、同作品のイベント映像の道のりも収録したカーテンコールに、「自分も2011年から三年間『レイプゾンビ』と一緒に生きてきたなあ」と感慨を新たにした。

「レイプゾンビチャンネル」というユーチューブの動画番組で、出演した女優達にインタビューしたことも昨日のことのように思い出す。


壮大なサーガ
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アクション
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SF性
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8/9(土)〜15(金)
池袋シネマロサレイトショー
『レイプゾンビ完結編〜新たなる絶望(劇場用特別編集版)』


8月23日(土)
レイプゾンビ完結記念、全作一挙上映十時間耐久イベント
阿佐谷ロフトA


公式サイト http://lust-of-the-dead.wix.com/official


ゴー宣ネット道場『切通理作のせつないかもしれない』
レイプゾンビ完結編記念トーク・友松直之監督を迎えて
http://www.nicovideo.jp/watch/1403856136