公開中「緊縛絵師の甘美なる宴」脚本百地優子さんのコラム!

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発行者である私・切通が親族の葬送で喪主を務める日が
発行日前後と重なったため、
第20号の配信がただいま遅れております。

私ごとで遅れて大変申し訳ありません!
日曜より作業を再開し、鋭意続けております。

百地優子さんから頂いた原稿は、土曜日から公開開始されている新作映画についてなこともあり、当ブログで先行公開させて頂きます。

以下に掲載します!
 

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Vol.020掲載予定原稿先行公開 

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女子ときどき、ピンク映画 百地優子
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第19回 「緊縛絵師の甘美なる宴」について

 9月19日より、上野オークラ劇場、横浜光音座2にて、私が脚本で参加した友松組の新作「緊縛絵師の甘美なる宴」が公開されています。タイトルからもわかる通り、今回は緊縛をテーマにした、時代劇風の作品です。(といっても、大正昭和あたりですが…)

 あらすじはこうです。

 緊縛画を専門とする絵師の小池は、自身の創作人生の総決算となる全集の制作に打ち込んでいた。ある時、担当編集者の早川が一人の少女・詩織を連れてくる。おおよそ色気も何もない少女ではあったが、小間使いにでも使ってくれと言われ、むげに断ることもできず、小池は詩織を家におくことにした。
 小池邸で目にすることは、詩織にとって驚きの連続であった。モデルの美香が緊縛されている姿、小池の妻・佐代子が緊縛されさらに詩織に見られていることで興奮している姿…最初は驚いてばかりの詩織であったが、次第に自分の中にある感情が芽生えてくる。
 小池がひいきにしているモデルの美香は、小池のもとに住み込み弟子として働く伊藤と恋仲であった。小池の目を盗んで密会を繰り返していたが、ある時小池との約束の時間に大幅に遅れてしまう。たまりかねた小池は、あるいはと期待して、詩織をモデルに起用する。小池の思った通り、化粧をして着飾った詩織は美しく、そして緊縛されることで詩織の中の緊縛の素養が開花した。小池は詩織の姿を一心不乱に絵画にするのだった。
 お払い箱となった美香は、伊藤と企み、小池を陥れようと計画する。神経を麻痺させる薬を食事に盛ろうとしていたのだ。
 数ヶ月後、小池は半身不随となり、筆も持てなくなってしまった。その裏で伊藤は、早川と佐代子を抱き込み、自分が小池の緊縛全集を書き上げる約束をとりつける。
 さらに数ヶ月後、緊縛全集は小池と伊藤の連名で出版された。詩織以外に誰もいなくなった小池のもとに、その全集を手に早川がやってきた。ふと小池は、詩織の素性を早川に尋ねる。そこで小池は、衝撃の真実を知る…。

 今回の見所は、なんといっても緊縛です。最近では壇蜜主演の「甘い鞭」でも緊縛指導を担当した、有末剛さんが緊縛を担当してくださっています。有末さんの緊縛の魅力は、緊縛された女性の体が美しく見えること。作中では小司あんさん、若林美保さん、あやなれいさんが緊縛されていますが、それぞれの体型にあった緊縛がされていて、とても美しく、妖艶な姿を披露しています。カラミ以外でも、女優さんの魅力的なシーンを作れているのではないでしょうか?
 もともと有末さんとは、池島組を中心に脚本を書かれている五代暁子さんを通して知り合いました。2013年に公開された友松組の「人妻女医 性奴隷の悦び」という作品の試写に来ていただいたタイミングで、ちょうど五代さんは有末さんと「緊縛夜話」という芝居を企画していて、その後「緊縛夜話」を観に行ったり、私は出演もさせていただいて、今回のようなご縁ができた…といういきさつです。友松監督も私が出演した「緊縛夜話」を観に来てくれて、さらに「甘い鞭」を見て、せっかくだから是非有末さんにお願いしたい、ということで、今回緊縛を担当していただきました。
(ちなみに「緊縛夜話」というのは、緊縛と芝居を融合させるという実験的な舞台です。私が出演した「第四夜 聖なる業」は緊縛オペラというものに挑戦し、ダンスと音楽、そして緊縛を融合させた変わった舞台となりました。)
 緊縛シーンには是非注目して見てみてください。

 今回の脚本も、監督と意見を出し合いながら作っていきました。
 時代劇っぽい緊縛をやろう、というのは最初のテーマでしたが、そこに「シンデレラ」の要素を足しています。ひとりの身寄りのない女の子が、先輩モデルや奥様にいじめられて…でも緊縛をやってみたら美しい姿になって、画家に見初められる、というような。緊縛シーンをメインに見せたかったので、今回はストーリーはシンプルにわかりやすくしようという狙いがありました。
 そういったことを思っていたら、第一稿はかなり淡々となってしまい、「もっともったいぶれ」と監督に注意を受けました。
 「もったいぶる」というのは、ひとつの結論にいたるまでに、スムーズに物事が進むのではなく、様々な障害やエピソードから観客に「もしかして…」と期待させながら、最終的にその結論におちつくようにしろ、ということです。
 今回で言えば、最初から詩織をモデルに起用するのではなく、小間使いとして仕方なく家においていた子が、ほかの女性の緊縛の姿を見て徐々に表情が変わっていくというようなところで期待をさせ、モデルがいないからたまたまモデルにしてみよう…というところで「これは化けるぞ」と観客に期待をさせる、というようなやり方です。
 冒頭のただの田舎の少女でしかない詩織が、緊縛によって美しく変身するのが一番の見せ場であり、そこにいたるまでにいかに盛り上げるか、という部分の書き込みが追加されました。

 今回の作品作りは、個人的にも非常に楽しい作業でした。もともと緊縛には興味があり、有末さんの緊縛教室に何度かお邪魔したり、舞台も出たりしていたので、その経験を作品に生かす機会を得ることができたのが嬉しかったです。
 緊縛はする人・される人の間に、ただのプレイ以上の信頼関係が必要となります。される側は身動きがとれなくなってしまうので、相手に自分の体すべてを委ねることになります。ただ苦しい思いや痛い思いをして快感を得るわけではなく、苦しさに耐えることと解放されたときの安心感に、ほかでは感じることのできない快感を覚えるのではないかと思います。
 だからこそ、今回の主人公である詩織と小池の間にある絆は、これまでに書いたものとは種類の違う、業の深いものになっています。ふたりの独特の愛の形を、作品を見て感じ取っていただけると嬉しいです。

 今回、私は参加できませんが、9月23日(祝日)15時から、上野オークラ劇場にてプチ舞台挨拶が行われます。
 女優さんや監督に会って話をすることもできますし、普段よりも舞台挨拶目的のお客さんが多いため、劇場にも行きやすいと思います。この機会に是非お越しください!



☆プチ舞台挨拶
9月23日(火・祝)PM3時☆小司あん、若林美保、有末 剛、友松直之監督登場『緊縛絵師の甘美なる宴』プチ舞台挨拶が上野オークラ劇場であります!
http://www.okura-movie.co.jp/uenookura/

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