『怪獣使いと少年 増補新装版』刊行にあたって
本日4月3日、私にとって処女単行本である『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』が、刊行後22年を経て、「増補新装版」として洋泉社より刊行を開始します。
- 作者: 切通理作
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2015/04/03
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本は、昭和のウルトラマンに関わった金城哲夫、佐々木守、上原正三、市川森一という四人の脚本家に焦点を当て、彼らの作品を通して、当時子どもとして番組を見ていた自分をも、時代と共に問い直す本です。
「これから30分、あなたの目はあなたの体を離れ、 この不思議な時間の中に入って行くのです」というナレーションは、ウルトラシリーズの原点『ウルトラQ』のものでした。
当時アメリカ領だった沖縄から来た金城哲夫、上原正三。「日本原住民」に傾倒した佐々木守。長崎のキリスト教圏から来た市川森一。
彼らは、「日本に生れたのだから日本人である事は当たり前」だと信じて疑わなかった少年時代の僕を、「ここではないどこか、いまではないいつか」と出会わせました。
そして、時には自分という存在を根底から不安にさせ、社会との関係をとらえ返さずにおけない世界を見せてくれました。
僕はテレビのブラウン管を通して、自分という殻を破り、自分という器を外から見る経験を持てたと思います。それもまた一つの「体験」でした。
この本は、1960年代に生まれ、かつて「テレビッ子世代」と呼ばれた、当時二十代だった僕の世代のマニュフェスト的な意味合いもありました。
刊行後22年経ちましたので、その背景にある時代についても、改めて語っていく事にしました。追加取材分や、以前は掲載できなかったインタビュー部分も合わせて、新たに原稿を書かせて頂いております。
今回加筆した新章では、四人の作家が、まだテレビというものが普及していなかった時代から、どのように子ども達と向き合ってきたのかを再検証します。
それは、巨大メディアという名の、もうひとつの怪獣に呑みこまれていきながらも、時代や世代を越えて出会う事の出来た、視聴者側の子どもたちと、脚本家たちとの間にあるドラマでもあります。
ぜひ御一読、御感想いただければ幸いです。