『怪獣使いと少年 増補新装版』刊行記念トークに福井晴敏さんが登場

怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち 増補新装版』で生まれて初めての書店サイン会を行わせて頂く事になり、不安な日々でしたが、トークコーナーで『亡国のイージス』『終戦のローレライ』『ガンダムUC』の作家・福井晴敏さんに来て頂く事が決まりました。


「小学三年生の時に『ウルトラセブン』を見て感動して、最終回では泣いた記憶があるんです」
「作品=自分の寿命だとしたら、ウルトラシリーズを作った人たちはホント『永遠を手に入れたんだよね』って」
「<巨大>であるというのは欠かせないですね。あれは、そびえ立つ<父性>だと思うんです」
「あの頃のドラマって、作っている人たちが世の中を信じていない感じがひしひしと・・・・」
「でも豹変した人間を<悪>と描かないところがウルトラシリーズのすごいところなんですよ」
「既成の価値観ってものを疑えっていうメッセージ。それがドラマに埋め込まれている」
「テレビ番組で『どうにもならないこともあるんだ坊や』ってガッて肩叩かれるような経験は大事だなと」

 以上は、以前福井さんとウルトラマンについて話した時に、福井さんがされた話題です。

福井さんは知る人ぞ知るウルトラ好きでもあり、本書は旧版から読んで下さっています。また、お子さんが生まれてからは、初代ウルトラマンから『レオ』まで、一緒に全話見返されたという経験の持ち主でもあります。

旧版『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』を読んだ福井さんから、文庫版『亡国のイージス』の解説をご依頼頂いた事がお付き合いの始まりです。


4月26日、秋葉原書泉ブックタワーです。ご都合あう方はぜひ! 
 https://www.shosen.co.jp/event/14427/



■刊行にあたって 切通理作

怪獣使いと少年ウルトラマンの作家たち 増補新装版

怪獣使いと少年ウルトラマンの作家たち 増補新装版

この本は、昭和のウルトラマンに関わった金城哲夫佐々木守上原正三市川森一という四人の脚本家に焦点を当て、彼らの作品を通して、当時子どもとして番組を見ていた自分をも、時代と共に問い直す本です。

「これから30分、あなたの目はあなたの体を離れ、 この不思議な時間の中に入って行くのです」というナレーションは、ウルトラシリーズの原点『ウルトラQ』のものでした。

当時アメリカ領だった沖縄から来た金城哲夫上原正三。「日本原住民」に傾倒した佐々木守。長崎のキリスト教圏から来た市川森一
彼らは、「日本に生れたのだから日本人である事は当たり前」だと信じて疑わなかった少年時代の僕を、「ここではないどこか、いまではないいつか」と出会わせました。

そして、時には自分という存在を根底から不安にさせ、社会との関係をとらえ返さずにおけない世界を見せてくれました。

僕はテレビのブラウン管を通して、自分という殻を破り、自分という器を外から見る経験を持てたと思います。それもまた一つの「体験」でした。

この本は、1960年代に生まれ、かつて「テレビッ子世代」と呼ばれた、当時二十代だった僕の世代のマニュフェスト的な意味合いもありました。

刊行後22年経ちましたので、その背景にある時代についても、改めて語っていく事にしました。追加取材分や、以前は掲載できなかったインタビュー部分も合わせて、新たに原稿を書かせて頂いております。

今回加筆した新章では、四人の作家が、まだテレビというものが普及していなかった時代から、どのように子ども達と向き合ってきたのかを再検証します。

それは、巨大メディアという名の、もうひとつの怪獣に呑みこまれていきながらも、時代や世代を越えて出会う事の出来た、視聴者側の子どもたちと、脚本家たちとの間にあるドラマでもあります。

ぜひ御一読、御感想いただければ幸いです。